あれは22歳の秋だった。
当時社会人リーグのサッカーチームに所属していて、
毎週火曜日の夜、小学校のグランドで練習していた。
ある日の練習中、中盤で競り合った弾みで転倒し、右
手首を強めに突いて激痛が走った。
捻挫かな?と放置していたら、日に日に痛みが増し、
たまらず病院でレントゲンを撮ると骨折していた。
自然治癒は難しいらしく、セラミック製のボルトを埋
め込む手術が必要との事で2週間ほど入院するハメにな
った。
初めての入院生活。
ちょうど祭り明けの時期で、祭りで喧嘩したりだんじ
りが足に落ちたりで怪我した同世代の若者が多数、同
じ大部屋に詰め合わせていた。
何がつらいって。
夕方になると他のみんなは彼女がお見舞いに来て、
カーテン閉めて、イチャイチャしちゃったりして。
ちょうどその時期、彼女が居なかった私は忸怩たる思
いを抱きながらイヤホンでMDプレイヤーを聴いてい
た。
翌日、夕べ彼女とイチャついていた、祭りでだんじり
に足をしゃがれて入院してた私と同じ歳のT松君が、
私にこう言った。
「加藤君も早よ彼女作らな。あの看護婦さんどんな?
彼氏おるか聞いてみよか?」
私と同じ歳くらいの可愛らしい担当のナースにT松君は
悪びれず即座に質問した。
T松「◯◯さん彼氏おるん?」
ナース「はい!いますよ^ ^」
T松「加藤君、残念やったね。。。」
濡れる体 溶けてしまうほど
昼も夜も離れずに
過ごした時はホントなの
君は今何おもう
腹の底から君の名前を
叫んでとびだしたIt's my soul
カラのカラダがとぼとぼと
はしゃぐ街を歩く
その夜MDで聴いた「LOVE PHANTOM」を、
今でも時々思い出す。
あの時の微妙な感情と共に。
私の運命を変える出会いはその翌年の事だった。